構造化できるAIと、問題を抱える人間。

2025年前半、私の興味は生成AI一色でした。小さな会社の経営者として、生成AIは私が苦手なバックオフィス業務をマルッと請け負ってくれる救世主に感じられました。苦手で面倒なルーチン作業はAIに任せて、私は野に解き放たれるのだ!と。しかし、現実は甘くありませんでした…。
塚越暁 2025.12.02
誰でも

2025年前半、私の興味は生成AI一色でした。小さな会社の経営者として、生成AIは私が苦手なバックオフィス業務をマルッと請け負ってくれる救世主に感じられました。苦手で面倒なルーチン作業はAIに任せて、私は野に解き放たれるのだ!と。

しかし、現実は甘くありませんでした…。

バイブコーディングに夢を見るも、敗れ去る…

生成AIとのコラボでプログラムを書く「バイブコーディング」に没頭し、私の「AI秘書」をつくる、と、目の下にクマを作りながら相当な時間、PCに向かいました。が、結果は失敗。実務で耐えられるレベルの「AI秘書」を開発するのは当時、技術的にまだ困難であったし、理想と現実のギャップは想定以上に大きかったのです。

期待が大きかった分、落胆も大きく、私のAIへの興味は急速に失われたのであります。夏前の出来事です。

季節が巡ってつい先日。

当時、バイブコーディングの成果を切磋琢磨していた南房総に住む友人、もっちゃんのところに遊びに行きました。もっちゃんのお仕事はコーヒー焙煎業なのですが、AIコラボが圧倒的に進んでおります。個人の現業×AIのひとつの理想形をいっているのであります。そんなもっちゃんと話していたらいろんなヒントの芽をたくさんもらい、AIに再び触れてみようと思い立ちました。

数カ月のブランクで触れた最新AIに、震える

改めてChatGPTの最新バージョンと、geminiと、googleが最近出したいくつかの新しいサービスに触れて、震えました。

当時(たかだか4カ月前)のちょっとしたストレスがかなり解消されている。仕事のアシスタントとして実務で軽やかに使えるレベルに進化している。人間にお願したら、ものすごい金額がかかりそうなコンサルティングや業務伴走が、目の前でサクッと展開される…。4か月前に感じていた、あと少し足りないストレス、いら立ちがほぼ無くなっている…。

鋭すぎるChatGPTの問題構造を把握する力

ちょっとした事例をひとつ。

私の大きな心の負担はSNSの業務運用でした。SNSが大事なのはわかる。だけど日々、投稿のための細かな作業時間を確保することは難しいし、写真のセレクトも文面を考えることも負荷が大きいし、プラットフォームごとの最適化を行うのもイチイチ面倒。挙句、一度投稿するとイチイチ反応が気になる(←反応が気になる自分自身もストレス)。そして、後回しになる…。後回しにして居ること自体がストレス。

そんな私の問いにChatGPTはずばりと構造課題を整理してくれました↓

何が「詰まっている」かの構造がかなりハッキリしました。

結論から言うと、原っぱ大学のSNSは
“新規集客したい”という目的に対して、
オペレーションが “既存顧客中心” の仕組みになってしまっていることが根本原因です。

そしてその背景には、
・素材探しの負荷が高い
・文案作成の負荷が高い
・投稿タイミング管理が属人的
・1投稿に必要な労力が多すぎる
・日常業務の流れに組み込まれていない

という“構造的な問題”があります。

ここからは、
“20分でできる、毎日動く、新規集客に強いSNSワークフロー”を
一緒に作る方向で進めます。
ChatGPTの鋭い問題構造把握

このあとの議論でつくりあげた業務フローがはまり、原っぱ大学SNS運用が回り始めました。

問題を抱え、細部にこだわるのが我ら

この事例から思うのであります。物事の構造を整理して把握し、スピーディにソリューションを提示する力はもはや生成AIにはかなわない(人間全般が負けるかは分かりませんが、少なくとも私は降参です)。

ただ、①問題を抱えることと、②細部へこだわること、はまだ人間の領域。

AIは問題が提示されないと動き出さない。考え出さない。

もちろん、AIは「ここに問題がある可能性があります」と提案はできる。でもそれが問題だと感じるかどうかは、当然だけど、やはり人間の領域。何が問題で、何にストレスを感じていて、何にいら立ちを憶えているのか。言語化がうまくできなくても、漠然としていても、「問題」を抱え、ストレスを感じられるのは我ら人間の特権(たぶん)。この人間の「問題」がAI駆動のエネルギーの源泉だと思うのであります。

もうひとつは細部への細かな意図の注入。

AIは俯瞰した目線で構造を把握して、論理的に破綻なく物事を組み合わせ、提示するのは圧倒的に上手。だけど、その破綻のなさゆえ、なんかのっぺりしたものが出来上がる(と私は思っています)。文章で言えば、文章のリズムや句読点の入れ方やちょっとした言い回し。スライド資料でいえば、そこにある無難な表現。

一見するときれいにまとまっているのだけど、細部に魂が宿っていない感じ。

ちまたにはそういう成果物が溢れだしているから、このこだわりがどこまで意味があるのか、この先も意味があり続けるのか私には分かりません。ただ、少なくとも自分が関わる成果物にはっこの細部の一見どうでもいいこだわりを、人間の癖を大事にしたいと思うのであります。AIが何かアウトプットを出してくれたとしても、それが世に出る前に人間である私の目を通してチューニングし、血を通わせたいと思うのであります。

完全な人間だけの世界にはもう戻れない。
一方で、AIに仕事のすべてを預けることは成立しない、面白くない(少なくとも2025年末の今は)。

攻殻機動隊みたいな世界ね。機械を身体の一部としていかにスムーズに、柔軟に仕事をできるか、というい世界。それでもそこにある「人の魂(ゴースト)」が世界を面白くしている。

(ゴーストを抱えた)人間である私の存在が大事。

問題を抱えられることは、特権。
そして人間は、細部に宿るんだな。

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おまけ。生成AI出戻りの私が最近、仕事で便利に使っているAIツール

①議事録&要約:zoomの録音機能+gemini3
zoom側にもAI要約機能があるのだけど、僕的にはこの組み合わせがよき。zoomの録音データ(録画だと重いので録音推奨)をgeminiに読み込ませ、議事録や要約を作ってもらう。geminiに渡すときに会議の目的や参加者プロフィールを渡すといい感じでアウトプットしてくれる。

②アイディアブレスト:chatGPTのグループチャット機能
最近追加された秀逸な機能。仲間とのグループチャットにGPTを含められる。自分に話を振られたと認識する以外は黙っていられる。人間-AIの1対1の関係じゃなくて、人間複数vsAIだから沸き起こる雑音というか揺らぎが、ブレストにぴったり!オンラインミーティングで、傍らにこのグループチャットのスレを開きながらブレストする、という使い方も。

③資料作りサポート:notebookLM
音声、動画、テキストからインフォグラフィックやスライドを作ってくれる。文字化けせずにびしっときれいなものを生成。ただ、スライドなどはやはり、おおむねOKだけど、細部が意図とズレたりするので、提案資料作成などの場合はそのままは使えない(僕の場合)。でも部分を活用したり非常に便利。

④プログラム創作:Antigravity
グーグルが出した開発ツール。以前、私はcursorというサービスを使っていて、これも私のような素人には革新的だったのだけど、antigravityはさらにすごい。なにがすごいって、コードもかけるけど、サイトのUIの調整なんかも軽々とやっちゃう。作りたいものがある人にとってはこんなにすごいツールはない。リリース直後の期間限定だろうけど、無料ってすごすぎ。

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