ぼちぼち冒険。オラが「町の川歩き」入門

どこにでもある小さな川。コンクリートで囲まれて、ちょっと低くなって、雑草が生えていて、ちょろちょろ流れる川。地域の無名な小さな川。この川の中をぼちぼち歩く。その行為は冒険であり、発見の連続であり、防災マインドを育む営みなのであります。そんな「町の川歩き」入門をまとめてみました。
塚越暁 2025.11.18
誰でも

どこにでもある小さな川。コンクリートで囲まれて、ちょっと低くなって、雑草が生えていて、ちょろちょろ流れる川。地域の無名な小さな川。この川の中をぼちぼち歩く。その行為は冒険であり、発見の連続であり、防災マインドを育む営みなのであります。そんな「町の川歩き」入門をまとめてみました。

「町の川歩き」って何だ?

世の中的な明確な定義は分かりませんが、私としては「川の中を歩く」行為とします。私は地元の逗子、葉山、鎌倉、横須賀エリアの川をはじめ、神奈川県内、都内、いろんな町の川の中を歩いてきました。もはや趣味のひとつ。そんな経験を今回はまとめてみてます。

私たちの町を流れる多くの小川は治水事業の成果で、基本は緩やかで浅く、危険個所も少ないです。水に浸かってもくるぶしから、腿程度までが多く「歩ける」川がほとんどです。水の流れを感じながらぼちぼち川を歩くこと。スタートもゴールも自分で決めてぼちぼち歩く。ぼちぼちなのだけど、日常の隣にあるちょっとした冒険なのです。

日本は本当に豊かな国で、日本中どこにでも「川」が流れています。その表情は千差万別。川によっては流れが急で立ち入ることが危険な川もたくさんあるでしょう。そんな川を歩くためには専門的な知識や装備が必要でしょう。対して、今回取り上げるのは「町」を流れる名もなき静かな川。皆さんの町にもひとつはあるであろう、コンクリで固められた、誰も見向きもしない小さな、穏やかな川。ここを歩くハードルは非常に低いです。境界線を越えるちょっとした勇気があるだけでOK。

10年前だけど、冒険家の八幡暁さんらと目黒川を歩いたときの写真。目黒川だって歩ける!

10年前だけど、冒険家の八幡暁さんらと目黒川を歩いたときの写真。目黒川だって歩ける!

ぼちぼち「町の川歩き」の魅力、BBH。

町の川歩きの魅力はBBHだと思っとります。「冒険」「防災」「発見」の頭文字でBBH。

日常の隣の小さな「冒険」

川を歩いていると、小さな堰(滝のような個所)があったり、暗渠(トンネルの様な個所)があったり。そもそも、日本の街中の川は治水のために道路レベルよりも一段、深くなっていることがほとんど。そこに降りていくだけでも冒険、です。日常は入らない場所に降り立ち、一歩一歩、自分で進むこと。これは紛れもない「冒険」です。上流部に差し掛かると岩場や小さな滝、ヤブコギなど文字通りの冒険。私たちの暮らすエリアでこんなにもワクワクします。その時間が楽しい。最高に楽しい。

ちなみに、日本には「河川自由利用の原則」があります。河川法という法律の解釈に基づいて、広く理解されており、占有しない限り自由に立ち入ることができます。詳しくは書きませんが、気になる方は「河川自由利用の原則」でググるかAIに聞いてみてください。

逗子の暗渠を探検。実は、テナガエビの宝庫。

逗子の暗渠を探検。実は、テナガエビの宝庫。

水の道を知ることは「防災」のキホンなり

自分たちの町の水の道を知ることは、地域の地形の成り立ちを知ること。私たちの暮らす土地には必ず川の流れがあって高低差があって、低いところには水が集まります。現代では治水工事や土地の造成で水の流れが地上から分かりづらくなっているけれども、川を歩くと体感できる。水が交わる場所、集まる場所。溜まる場所。どんなに地形を変えても、水の力はすごくて、元の流れに戻ろうとするようです。だから、地域の水の流れを知っていると、大雨や洪水への備えになる。どこが危ないかセンサーが働くようになる。極端な豪雨が増える昨今、自分の暮らすエリアの水の流れに意識を向けることは防災の入口だと思うのです。

暮らしの中の自然、見たのない景色の「発見」

都市河川は面白いです。人が治水のために整えた川。でもそこは自然と暮らしが交わる場所です。魚はもちろん、ヘビ、カメ、カエルなどの小動物や野鳥との出会い。クレソンやセリなど食べられる野草…。実は私たちの暮らしのすぐ隣には自然の生き物が普通に存在している。そんな生き物たちとの出会い。彼らの存在の発見。これが面白いです。

また、先に書いたように川に降り立つと日常よりも視点がぐんと下がります。自分たちが普段暮らす町を下から見上げることになります。この何とも言えない非日常感。新しい視座の獲得。一方で町ゆく人たちからは怪しい存在として見降ろされます。境界線を越えた存在としての背徳感もたまりません。ちなみに、子どもたちは明るく声をかけてくれることが多いです。彼らは日常的に川に降りていることも多く、川を歩く大人たちをみて「仲間」だと感じてくれるようです。

誰でもできる。「川歩き」のはじめかた

①地図を広げて妄想する
Googleマップ、もしくはYAMAPが出している流域地図を広げて、自分の住む町を流れる川を眺めてみましょう。自分の住んでいるエリアに流れる川は?その川はどこからやってきて、どこに向かう?川に降りられそうな場所はどこ?安全に歩けそうかな?妄想が冒険の第一歩。

②装備を整える
特別な装備はいりませんが、それでも必用なものはあります。ざっとあげると・・・・

  • 川を歩く運動靴:濡れてもいいもの、滑りづらいもの、ソールが厚めのものがいいです。サンダルはオススメできません。ちなみに私のイチオシシューズはvivo barefoot のハイドラ

  • リュックサック:両手を開けることが大事

  • 水筒・おやつ

  • タオル

  • 着替え:着替えはビニール袋にくるんで濡れないように

  • ヘッドランプ:なくてもいいけど、暗渠を歩くときに便利

  • ファーストエイドグッズ:バンドエイドやガーゼなど

  • GPSアプリ:現在地を確認できる&移動ルートを振り返れるので便利(無料版でOK!)

※GPSアプリのオススメは・・・
 Strava 町中の地図が充実しているので町中の川を歩くときはこちらがオススメ
 YAMAP 山間部の地形がしっかり見られるので山間部の川を歩くときはこちらがオススメ

③お天気チェック
町中の小さな川と言えど、大雨のあとは水位が上がっています。また、昨今のゲリラ豪雨にやられると危険です。週間予報で前後の天気予報を確認しつつ、当日は雨雲レーダーで雨雲の様子を適宜チェックしながら歩きましょう。Yahoo!天気アプリの雨雲レーダーが便利。

④入口を探す
実際に現地にいって、川に降りられる入口を探します。高低差がそれほどなく、安全に降りられる壁面やはしごを探しましょう。無理をしないことが一番!

町の川を実際に歩いてみた。大磯の名もなき川編

先日、原っぱ大学「おとな学部」で歩いた神奈川県大磯町の名もなき「町の川歩き」のレポートです。地図で見ると「湘南平」という公園で有名な高麗山(こまやま・標高168m)を源流に、大磯の町中を通って花水川という二級河川に合流する小さな川。河口から源流まで2,3kmというところ。町を流れるローカルな、小さな川。川歩きにぴったり。

①入口は花水川との合流地点。いきなり、腿ぐらいまで水につかる。11月の寒い日。出鼻をくじかれそうになるけど、すぐにくるぶしあたりの深さに。水温は冷たいけどすぐ慣れる。

②大磯高校の下は暗渠。町の川を歩くひとつのハイライトは暗渠。トンネルって何でこんなにワクワクするのだろう。200mぐらいかしら。高校生たちが勉強している真下をオジサンたちが歩いていきます。お休み中のコウモリの親子に遭遇。

③徐々に川が細く、蛇行するように。国道1号線の下は這いつくばらないと通れません。こんな風に国道1号線を渡る大人はなかなかいないでしょう…。国道1号線を越えると川はますます細くなってきます。捕まえようと夢中になって写真を撮りそびれましたが、このあたりでウナギに出会いました。豊かだな…。

④つづいて東海道線を超える土管。全長数十メートルの土管を通ると気分はマリオ。土管から先は河川の護岸工事がなくなり、自然地形の川に変わりました。ワイルドな山の川。この表情の変化が楽しい。

⑤ここからはがっつり自然の中のアドベンチャー。岩がゴロゴロしているエリアを乗り越え、突然現れる堰はヤブコギして迂回し、川が二股に分かれる個所ではどちらに行くか都度判断して…。徐々に水量が減って、水が途切れがちになり…。

⑥ついに最初の1滴、この川の源流にたどり着きました。小さな、小さな川の始まり。なんてことない水たまりなのだけど心が震えます。

ぜひ皆さんもご自身の町の川を歩いてみてください!小さな今まで、目を向けることのなかった川に降りてみるだけで充分ワクワクすると思います!(一人ではじめるのに抵抗があったらご連絡ください~)

※ちなみに11月29日の「おとな学部」では鎌倉を流れる「滑川」を歩きます。体験参加もできますのでもしよかったら一緒に歩きましょー!このメルマガを見てお申し込みくださる方は通常参加費11000円のところ、割引適用5500円にてご参加いただけまーす。下記リンクより割引体験チケットをご手配ください。パスワードはharappadaigaku そのうえで、11/29のページよりご予約ください!
チケットリンク
11/29滑川探検予約ページ

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