Gの気持ちを、考えてみる。
いま、皆さんが大嫌いなGさんが主役のゲームをAIと作っています。卵から孵化した幼体が脱皮をしながら成虫を目指し、次の世代を残すまでを体験するゲーム。ええ、主役は日本の民家に生息するクロゴキブリ。なんでまた・・・、という感じですが、どうか、落ち着いて。背景から順を追ってお伝えさせてください。
経験ゼロからAIとものづくりを楽しむ
先週の土曜日にAIとのものづくりを遊びながら学ぶ「デジタル原っぱ大学」の第2期がスタートしました。小学6年生から50代まで。小学生、中学生、主婦、会社員、経営者・・・。様々なバックグラウンドの参加者がつどい、AIエージェントを駆使してデジタルな「ものづくり」に励みます。そのプロセスを通じて、AIとの関係を上手に構築するリテラシーを手にて行く、そんな場です。(11月スタートの第3期の参加者募集を開始しました!)
オープニングデーにあたる先週の土曜日は、知識ゼロ、経験ゼロの皆さんがClaude CodeやCodexといった開発エージェントのアプリをPCにインストールするところから始めます。そんな、全くの未経験者の皆さんでも、1日の終わりには自分たちが「作りたい」と思ったアプリをそれぞれが作っていました。
ゲーム、業務ツール、家族との関係を深めるアプリ、家事サポートのツール、ピアノ練習のサポートアプリ、ツンデレ会話をするボット・・・。それぞれのちょっとしたアイディアや日常のちょっとした不満から生まれた唯一無二のアプリたち。
ClaudeにしてもCodexにしても、今のAIは本当に賢い。技術リテラシーがなくても、「これが作りたい」という思い付きさえあれば、何でも形にしてしまう。逆に、「思い付き」がないとAIは月並みな答えしかくれない。
私はいったい何を作りたいのか?
そんな皆さんの発想と形にする力に触れて、私は大いに刺激されました。
「じゃあ、私はいま、いったい何を作りたいのか?」
これは大きな問い。業務ツールは一通りつくり、いまは実務でのアップデートフェーズです。興味があったロボットも一通り形になり、あとは改善フェーズ。必要なものはおおよそ手元にあるし、必要でなくてワクワクするものがパッと思いつかない。
これが噂のアイディアの枯渇。いまの最新のAIをもってすれば、できることは無限にあるのに、そのなかで自分の食指が動くことが見つからない。これは危機的な状況です。人間の危機です。AIがなんでもできるようになったとき、人類に訪れるであろう危機の先取りです。ワクワクの枯渇…。恐ろしいことです。
雨の日曜日に大いに悩みました。いま、僕が圧倒的にワクワクするAIとつくりたいものは何だろう…。
原点に返って、ゲームをつくろうかな、と思ったのです。デジハラ2期に参加してくれている中学生のつくったゲームが非常に面白く、それに刺激を受けた部分が大きいです。そして、どうせ作るなら、学びがあることがしたい。これまでやったことのなかった3DモデリングをAIとやってみよう、と思った次第です。
3Dモデリングというのは、平面の画像から、デジタル空間に設置できる立体的なオブジェクトを生成することです。昔のファミコンのゲームが平面(2D)、今のプレステやwiiの立体的なキャラクターが3D。
そんなに嫌わなくても、いいじゃないか
じゃあその3Dのテーマを何にしようか、とあれこれ考えていたときにふと浮かんだのがGさんでした。
わが家は隙間だらけの古民家なので日常的にゴキブリに遭遇します。家族は当然、そのゴキブリを抹殺しようと大騒ぎをするのですが、私はどうにもそういう気分になれません。
ミミズだーって、オケラだーって、アメンボだーってー
みんなみんな、生きているんだ、友達なーんーだー♪
ゴキブリがなにをしたんだ、と思うのです。ゴキブリだって生きているんだ、友達なんだ、と思うのです。ただ見た目が不快でいきなり飛ぶだけで、特段、攻撃してくるわけでも血を吸うわけでもないのに叩き殺されるというのはあまりにも哀れ。僕はそんな虐殺には手を染めないと宣言し、家族のひんしゅくを買うわけです。
ゴキブリには天敵が多い。人間はもちろんですが、我が家にたくさん住んでいるアシダカグモはゴキブリが大好物。捕まえて殺してくるくるのゴキブリ団子を作ります(ちなみにアシタカグモがたくさんいるとゴキブリは激減するらしく、アシダカグモはamazonで販売されています)。
ドラマチックな、ゴキブリの一生。
なんと、受難多き生き物か。
この悲しき嫌われ者を主人公にしたゲームをつくったら・・・。そのゲームで主人公に感情移入をしたら、人々はこのか弱き生き物に優しいまなざしをむけられるのではないか。そんな思いが湧いてきまして、クロゴキブリの生態を調べてみました。これが、非常に面白いのです。
・1個の卵鞘と呼ばれる固い隔壁に囲まれた卵から26匹の兄弟が生まれる(卵鞘は非常に頑丈)
・成虫になるまで10回の脱皮を繰り返す
・寿命は20カ月ぐらい(成虫になるまで1年ぐらい、成虫になって半年ぐらい)
・幼体は集まって暮らすけど、その後は排他的にバラバラに生きる
・飛べるのは成虫だけ
・糞には他の個体を誘引するフェロモンが含まれる
・身体に数百本の毛が生えていてその毛が空気の流れを察知するセンサーになっている
なんだかめっちゃドラマチック。まるでファンタジーRPGの主人公のように分かりやすく脱皮でレベルアップしていく。最終形態になってはじめて飛行を憶えるだなんて!!
そんなわけで、主人公をゴキブリに決め、まずは第1章の製作に入った次第です。Claude、Codexとともに、Blenderとう3Dモデル生成ツールを駆使して作ったゴキブリの幼体の3Dモデルがこちらの画像。足の位置やボディのバランスなど、ずいぶんとやり取りをして完成させました。

私のめでたき3Dモデリングの成果物の第1段がゴキブリとなりました。乾杯。
そして、第1幼体を主人公とした第1章のプロトタイプ版がある程度、できてきました(まだ未公開です)。屋根裏部屋を舞台にクモや蟻から逃げながら、脱皮を目指す、というアクションアドベンチャーです。か弱きゴキブリをプレーすると、やはり感情がこもるものです。

願わくば、私がこのゲームを無事にリリースでき、多くの人にゴキブリの気持ちを体感して頂けたらと思っております。
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