津波警報で子どもたちが見せてくれた「生きる力」。

夏ですね!先週、私たちは横須賀、長井の海での2泊3日「冒険合宿」に子どもたち12名と出かけていました。その中日が7/30。カムチャッカ半島沖の地震により「津波警報」と「避難指示」が出る緊急事態で、文字通りスタッフも子どもも「大冒険」な合宿になりました。
塚越暁 2025.08.05
誰でも

夏ですね!先週、私たちは横須賀、長井の海での2泊3日「冒険合宿」に子どもたち12名と出かけていました。その中日が7/30。カムチャッカ半島沖の地震により「津波警報」と「避難指示」が出る緊急事態で、文字通りスタッフも子どもも「大冒険」な合宿になりました。

今回の経験で12名の子どもたちのあり方に感動したことが2つあります。

①緊急時、危機的状況での子どもたちの集中力と行動力の素晴らしさ
②そんな「緊急事態」下でも腐らずに遊べる彼らのたくましさ

世代を超えて受け継がれた迅速な避難行動

まずは①緊急時、危機的状況での子どもたちの集中力と行動力の素晴らしさについて。

今回参加してくれた子どもたちは小学2年生から6年生。6年生の子でも2012年生まれだから東日本大震災を経験していないわけです。あのときの直接の体験、怖さを知らない子たち。それでも「津波が来るかもしれない」という情報、警報を伝える防災無線に自分の身を守るスイッチが自然と入りました。

その日は合宿2日目の朝。海況もよく澄んだ海が目の前に広がり、これからまさに海遊びを始める…、というタイミングで津波の第一報が入りました。子どもたちが膝まで海に浸かってまさにこれから!というタイミングでいきなりのお預け…。

この写真の直後に津波警報…。青い空、青い海、白い雲…。

この写真の直後に津波警報…。青い空、青い海、白い雲…。

警報を聞いて、①まずは海から上がり目の前の高台の神社に一時避難 ②車をまわして急いでさらに高いエリアへ避難という判断をしました。警報から動き出しまでその間、数分もかかっていないと思います(判断を即座にして、それぞれが動き出した原っぱ大学スタッフの素晴らしさよ!)。

その指示のもと、子どもたちはすべての荷物を置いて神社の階段を一気にかけあがりました。

改めてこの行動、すごいことだと思うんです。「津波」の危険を理解し、すぐに避難行動に移ることができるマインド。「もっと遊びたーい」「めんどくさーい」とならないで一気に動き出せたこと。

この災害が多い島国に暮らす私たち日本人の深いところで、危機回避の習慣が着実に受け継がれているということを感じました。日々の家庭での対話はもちろん、学校やメディアなどで語られる津波をはじめとした自然災害の怖さを各自がよく知っていて、自然と退避行動がとれる。東日本大震災の教訓が世代を超えて受け継がれている。東日本大震災の後に生まれた子どもたちの動き出しの早さ、的確さに、緊急事態のど真ん中にありながら感動してしまいました。

幼児向けの「じゃぶじゃぶ池」だって最高の遊び場

そして②「緊急事態」下でも腐らずに遊べる彼らのたくましさについて。

もうひとつ、今回、私が圧倒的に感動したことです。

私たちは車で高台に避難しました。海抜20m‐30mの高台。安全でしょう。ただ、いつ警報が解除されるか分からない。夏の暑い時期だし、今後の動きが全く見えない。

避難した高台には「ソレイユの丘」という地元では有名な横須賀市のレジャー施設がありました(子どもと遊びに行くと楽しい場所です。入場無料!)。ソレイユの丘の園内に幼児が遊ぶじゃぶじゃぶ池があることを知っていたので、とりあえず、そこに子どもたちを連れて行きました(なんせ、皆、海に入る直前でお預けを喰らっていたので水着姿。そして、炎天下でほかにやることもない…)。

ソレイユの丘は高台にあることもあり、津波警報発令後も平常運行でした。じゃぶじゃぶ池には幼児たちがきゃっきゃと楽しそうにしています。水深30㎝に満たない安全な池。「冒険」とは程遠い池。魚もいなけりゃ、飛び込みもできない…。

それでも12名の原っぱっ子たちは文字通り水を得た魚のごとく、じゃぶじゃぶ池で遊び始めました。這いつくばって追いかけっこをしたり、水をかけ合いしたり…。このとき11時前ぐらいだったと思います。当初、避難警報が解除されたらまた海に行くか、とのんきに考えていたけど、どうにも警報が解除される様子が無い。そしてほかに行く場所もない…。

お昼ご飯を挟んで、1時間、2時間、3時間と時間が経っていきます。ひたすら、じゃぶじゃぶ池。

与えられた環境でご機嫌に遊び続けられる力

私はさすがに子どもたちが不憫になって、有料のアスレチックを体験させてあげようと、事務所に聞きに行きました。子ども一人あたり2400円という容赦ない回答…。財布とにらめっこして、諦めました…。子どもたちよ、なんかごめん…。

そんなケチな自分に若干の後ろめたさをもちながらじゃぶじゃぶ池に戻ると、子どもらは変わらずに全力で遊んでいました。12名の誰一人文句言わず。

しかも新しい遊びを開発し、何だか全力で遊んでいます。

じゃぶじゃぶ池にそそぐ水路を子どもたちの身体でふさいでしばらくせき止めて仮初のダムをつくり、水がたっぷり溜まったところで開放、鉄砲水のような激流がじゃぶじゃぶ池に注ぎ込み下流の子が思い切り流されるという遊び…(ちなみにこのタイミングで、この池には幼児はいませんでした、念のため)。

ガハガハと皆で笑いながら、周囲の同年代の子どもらも巻き込んで、遊び続けています。

感動。

有料のアスレチックを「体験させてあげよう」とは何とも浅はかな配慮だったことでしょう。こんな池では退屈するに違いない、と彼らを見くびっていたようです。全然大丈夫だった。彼らは目の前の与えられた制約条件のなかで思い切り「遊ぶ」力を持っていました。遊びを生み出して、自分たちと仲間たちと周囲のいろんな人たちとエネルギーを交換してた。

原っぱ大学で僕が実現したいと思っていた景色がそこにありました。ただそこにあるもので、その環境との関わりで全力で遊び合う。最高じゃないか。君たち、最高じゃないか。

彼らは、今が緊急事態だということを理解していて、避難中だということも理解していて、あーだこーだ文句言っても詮無きことと理解していて、今日はもう海で遊べないだろうことも理解していて…。そのうえで、目の前の時間を腐らずに全力で楽しんでいました。

「生きる力」って言葉はあんまり好きじゃないのですが…。12人の子どもたちは生きる力が溢れていました。君たちは強い。大丈夫だ。そう感じさせてくれました。

自然災害を過度に恐れず、かといって侮らず

元々の宿泊先が避難指示エリアだったため、急遽ご縁で山間の築150年の古民家にとめていたり、最終日も津波注意報が出ていたので海には遊びに行けず、大楠山の清流に探検にでかけたり、と当初、海尽くしを予定していた3日間から大幅変更の日程でしたが、子どもたち、スタッフ、サポートしてくださった皆さまのおかげで、二度と再現できない「大冒険」の合宿となりました。

そして、12名の子どもたちは私たち大人が与えようと思っても渡せないような貴重な学びを身体に刻んでくれたと思います。

子どもを預かる大人としての教訓はいくつかあります。
①備える。最悪の事態を想定する(今回も津波の場合の対処方法は検討してありました)
②そのうえで、現場では目の前の状況をもとに臨機応変に対応する
③腐らない。命が守られればどこでも人はどこでも適応できる。楽しめる。どこにも学びがある。

自然災害を過度に恐れすぎず、そして侮りすぎず、これからもフィールドで遊び続けようと思います。

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