職業人としての「生成AIネイティブ世代」と出会って。

本日のお題は職業人としての「生成AIネイティブ世代」について。私たちHARAPPA株式会社は創業以来、企業研修のプログラムも提供しております。そんなプログラムを通じて20代前半の若者たちと触れ合うなかで、「AIの使い方について」気づいたことがあります。
塚越暁 2025.08.26
誰でも

本日のお題は職業人としての「生成AIネイティブ世代」について。私たちHARAPPA株式会社は創業以来、企業研修のプログラムも提供しております。そんなプログラムを通じて20代前半の若者たちと触れ合うなかで、「AIの使い方について」気づいたことがあります。

非常に微妙な差異なのだけど…。自分の頭を拡張させるツールとしてAIを使うのか、あるいは単なるAIのアウトプットの代弁者になるか、基本的なスタンスを育むことが大事だよな、と考えた次第です。

企業研修で出会った「生成AIネイティブ世代」

背景から少し説明させてください。

私たちHARAPPA株式会は原っぱ大学のフィールドでのナレッジを横展開する形で、企業研修のお仕事をさせていただいております。「遊びゴコロ」「身体を使う」「本番」「感じ合う」「つながり合う」といった私たちのど真ん中のキーワードを軸に完全オリジナルなプログラムを提供しています。メンバー同士が身体経験や遊びゴコロを共有することで、深いところでつながりあう、という場づくりが得意でございます。ご興味ありましたらぜひお気軽にご相談ください!

いきなりの宣伝となってしまいました。

いま、ワタクシは1泊2日の研修の仕切りの真っただ中にこの原稿を書いております。10年近くお仕事をご一緒しているとある企業の新卒内定者向け研修です。これだけ長い期間、お仕事をご一緒していると、毎年、新卒社会人の定点観測の機会になっております(ありがたい!)。

毎年、20人前後の若者と2日間か3日間、一緒に過ごすと、その年の内定者たちの世代の特徴、みたいなものが何となく伝わってくるんです。もちろん、採用方針の変化などもあるのかもしれませんが、ゆるやかに若者世代の特徴を私が知るよき機会になっております。

今年、これまでとの差分で大いに気づいたのは彼らは職業人としての「生成AIネイティブ世代」だ、ということ。

「ググる」ようにChatGPTに聞いてから考える

これだけ生成AIが一般に浸透した2025年だから当然のことなのですが、彼らは、私たちの世代が普通に「ググる」ようにChatGPTに聞く。研修ワークの途中に彼らのスマホを覗くとあちらでもこちらでもChatGPTの回答画面が映っているのであります。カンニングするようにこっそり使う、のではなく、日常の動作の一部のように生成AIとのやり取りを土台にワークを進めるのであります。特に自分たちがそれほど詳しくない領域でアイディアを考えたり、仮説を作ったりするプロセスで生成AIの情報をスタート地点に思考を回している姿が印象的でした。

私は生成AIを使うことに批判的なわけではありません。私たちが提供している場は「研修」なので、本当にNGだと思うのであれば「生成AI使用禁止」というルールにすればいいだけです。しかし、日常にここまで生成AIが浸透押した世界ではそれは意味のないことだと思っております。

ただ、誤解を恐れずに書くと、この生成AIの情報をスタート地点に思考を回した際のアウトプットが非常につまらない。もっとはっきり書くとレベルが低い。どこかで聞いたことのある平均値っぽい答え、正解っぽいけど具体性が乏しいものがでてきます。スピーディにそれらしい答えにたどり着くけど、自分のものになっていない。

もちろん、研修のお仕事をいただいている身としてはそこからが腕の見せ所なわけです。この小さくまとまってしまうスタート地点からどう飛躍を生み出し、人間が価値を生む機会を創り出せるか。自分の介在価値の大きさに気づけるかが勝負なわけです。

問われ続けることでAIの出した「正解」を超えていく

これはもう、問い続けるしかないと思っています。生身のコミュニケーションで問う。「なんでそう考えるの?」「それは本当にそうなの?」「具体的なイメージはある?」「あなたはどう感じるの?」

AIに問うのではなく、そのAIを使っている人にダイレクトに問い続ける(AIに確認する間を与えずに)。そして率直に伝える。「その提案はつまらないね。」「どこかで聞いたことある提案だね。」「あなたがその提案をする意味ある?」…。

ここまで面と向き合うと一人一人の頭と心が動き出します。

AIを使って涼しい顔をしてアウトプットにたどり着こうとしていた一人一人がちょっとしんどそうな、顔になって真剣に、集中して自分の引き出しを探し始めます。スイッチON。このスイッチが入ることが「人間」が仕事をする意味だと思うのです。

彼ら、若い世代は柔軟だし、きっとベースが優秀なのでしょう。一度、スイッチがONになれば、生成AIの「それらしい正解」に縛られることなく、自分たちの思考のなかから、凸凹だけどオリジナルな意味のある提案を必死になって創り出してくれました。

もしかして自分は旧世代の老害なのかしら?

職業人としての生成AIネイティブ世代が社会にどんどん出てくる時代。

お仕事のお作法も変わりそうだと強く実感しました。生成AIを使うこと自体は当たり前になるでしょう(もうなっていますね)。きっと、その使い方のお作法を構築していくことが大事になると想像します。

考える主体が人間で、その思考の幅を広げるためにツールとしてAIを使う。これは有用だと思う。一方で、無自覚に、思考の枠組みをAIに作ってもらうことに依存してしまうと、狭い思考の枠から抜け出せなくなってしまうと思う。ただAIが提示するままに平均的な答えをコピペする人になってしまう。それで「仕事をした」気になってしまう。自分が優秀だと思ってしまう。わからんけど。

と、ここまで書いて、もしかして、僕が新しいテクノロジーの利用価値をきちんととらえきれていない古い世代の老害の可能性もあるよなとも思いました(テレビは悪だ、インターネットは怖い、スマホはダメだと言ってきた旧世代のように…)。

まあ、先々はちょっとよくわからないけど、自分も生成AIを使いつつ、若い世代の新しいツールの使い方をじっくり見ていきたいなと思った次第です。

私たちの研修では段ボールや木材を使って手を動かす時間を大切にしています。身体を使うことで思考がどんどん自由に、拡張されていくのです

私たちの研修では段ボールや木材を使って手を動かす時間を大切にしています。身体を使うことで思考がどんどん自由に、拡張されていくのです

無料で「原っぱ大学 ガクチョー塚越の「つれづれ通信」」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

誰でも
溺死しかけたハクビシンを助けた話。
誰でも
「生きる力」の土台。「生命力」を磨くのだ。
誰でも
2日後に海外へ旅立つ娘へ(公開お手紙です)。
誰でも
津波警報で子どもたちが見せてくれた「生きる力」。
誰でも
イライラDAYSに気づいたこと。
誰でも
祖父が、残してくれたもの。
誰でも
会社設立10年の節目に思うこと。
誰でも
非エンジニア・初心者向け「AIものづくり」を楽しむ10のヒント