大学生になった息子へ(公開お手紙です)。
4月に入って私のSNSタイムラインには進学、進級の投稿が溢れています。これまでに関わりをもったあの子やこの子が進学、進級という話を目にするとおじいちゃんのような気分で嬉しくなります。我が家もこの春、長男が大学生に、長女が高校生になりました。あっという間です。今回はこのメルマガの秘かな読者だという長男に公開お手紙を書いてみようと思います(面と向かってだと言えないこともあるので)。
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大学進学、おめでとう。
「将来、やりたいこと」のイメージがおぼろげながらあって、歩んでいきたい道がなんとなくでも見えていて、その道に沿った学ぶ場を選択した君が本当に素晴らしいと思っています。ちなみに何度も伝えたけど、僕はそういうものがまるでなかった。「受験はゲーム」だと思って、ただ入れる中で一番「偏差値が高い」大学を狙って、そこに受かったら「勝ち」という振り返ればしょーもない判断基準で大学を選んでいました。
だから、君のスタートラインは本当に素晴らしいと思う(そしてちょっと羨ましい…)。
今、君が「やりたい」と思っていることは誰からも押し付けられたものではなくて。小学校、中学校、高校と試行錯誤して積み重ねて、ときにはしんどい思いをしたり、失敗をしたり、もう嫌だ、と思ったりしながらたどり着いたとてもとても尊いものだと思っています。
その思いは宝物だと思うし、迷ったときに帰ってくる大切な原点だと思う。
一方で、これから、たくさん迷うことがあるだろうし、それもいいと思うんだ。今の世の中、とかく「一度決めたら、やり切らなきゃ」となりがちです(僕もそう)。人に宣言しちゃったから途中で方針変更するとフラフラしていると思われそう、なんて考えてしまうよね。
でもね、フラフラしたらいいのだと思う。方針は変更したらいいのだと思う。今、見えている世界と大学で4年間過ごした後の世界は見え方がきっと違うはず。もしかして、大学に入って向こう半年でも全然違う世界が見えてくるかもしれない。そのときには胸張って「前言撤回」と言ってもいいんだ。もしくはそんなはっきりと言葉に出来ず、悶々と悩むかもしれない。もやもやしてどうしたらいいか分からなくなるかもしれない。不安定で不安になるかもしれない。一寸先は闇、と思うかもしれない。
でもたぶん、その時間がすごく大事。そうやって立ち止まって悩むこと。言葉に出来なくて苦しい時間を過ごすこと、その経験のひとつひとつが君の血や肉になっていくと思う。
キャリアや生き方を直線的に、最短距離で決めようとしないでいいからね!と声を大にして伝えます。どうしても、わかりやすい選択、華やかな選択、言葉にできる価値や役割が貴ばれるし、そういう言葉を発したほうがいい、という風潮が強いように感じるけれども。そんなに急がなくたっていいと思うぜ(急いじゃう、焦っちゃう、ということを体感するのもまたありだと思うが)。
自分で感じること、考えること、選択することを大切にしてほしいな。あ、でも人から言われたら揺れ動くし、人の目線を気にしてしまうことだってそりゃあるよね(アタクシもあります)。だからまあ、それも仕方ない。それもまたよし。
エラそうに大学進学にあたって公開メッセージを君に書く、と書き始めてみたけど、どっちでもいいよ、としか書いていない気がする…。そう、結局、なんだって大丈夫なんだ(身もフタもない)。
大いに迷って、失敗して、回り道して、そういうのをゆっくりじっくり積み重ねればいい。
たぶん、これまでの時間は蓄える時間だったのだと思う。栄養になりそうなものをなんでも自分に取り入れてどんどん容量を広げていく時間。それが子ども時代。ここから先は、少しずつ自分自身が選択をしていかなくちゃいけなくなるはず。限られた時間、お金、ご縁、たまたまやってくチャンス。そういった場面場面で選択して決める、ってことを繰り返していくことになるんだ。
選択するってことは、一方を捨てるってこと。全部を得ることはできないってことだから、ときに痛みを伴うんだよね(この痛みは僕もいまだに苦手です…)。ああ、こっちじゃなかったかと後悔しちゃうこともそりゃある。
でも大人になるって、たぶんそういうことです。痛みや後悔も含めて丸っと生きる。
一筋縄じゃいかないかもしれんけど、自分を信じたらいいのだと思う。答えは全部、自分の中にある。それだけのものを、君はこれまでに培ってきているから大丈夫。そして、まわりには家族や友達、君を助けてくれる人がたくさんいるから。ひとりぼっちじゃないから。
だから、そんなあれこれをぜんぶ丸ごと楽しんで。
僕も、君からたくさんのことを教えてもらって、毎日を楽しんでいます。
ありがとう。
父より
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長男にあてての手紙だけだと、娘から怒られそうですが、それは今回のメルマガの仕立て上、また別途ということで!ごめん!
12年前。小学1年生の初登校の日の長男。12年、本当にあっという間でした。
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