非エンジニアでもできる「AI秘書」の作り方(実践編)
私がAIワールドに没入してからあっという間に2カ月が経ちました。「AI秘書をつくる」というプロジェクトは想定していたよりも時間がかかっていますが、確実に前進しています。そしてAIの世界の沼に深く、深く、深く…、はまり込んでいます。今日は「実践編」ということでエンジニアではない私がなるべく平易な言葉で2025年4月バージョンの「AI秘書の作り方」をまとめてみることにします。
私の目的:私と私のチームメンバーが、人間がやらなくていい&私の不得意なルーチン業務やタスク・スケジュール管理を確実にこなしてくれるAIエージェントに委ねたい。
そのようなAIエージェントのプロダクト、サービスはたくさん出てきているのですが…、あえてこれを自作していることの意味は以下の3点です。
①「自分で手を動かす」ことでAIの最前線を知れる
②弱小企業の私たちの業務フローに特化したAI秘書を作る
③とにかく楽しい
そして、こういう記事を1か月前に書きました:
非エンジニアでもできる「AI秘書」の作り方(導入編)
たった1か月前の記事なのですが、今読むと、すでに古く感じる…。何だこのスピード感は…。
この1か月の試行錯誤で生成AIの使い方が私の中でだいぶ変わってきました。本日現在の私の「使い方」をシェアしたいと思います。たぶん1か月後にはまた変わっていると思うけど…。
超優秀な生成AI、Claude君がチームにジョイン(有料版20ドル/月)
ChatGPTに加えて、Claudeという生成AIを有料で契約しました。合計で月額40ドル。なかなかの金額ではありますが、いろんな使っていないサブスクを見直せばそのぐらいになるし、携帯電話代のようなインフラコストだと思えば安いものです。
Claude君、めちゃくちゃ優秀です。優秀ポイント↓
①Claudeデスクトップといって、自分のPCに環境をつくり、自分のPCのファイルなどにアクセスしながら自在にタスクを進めてくれる。
②MCP(Model Context Protocol)という接続機能を使うと、様々なツールをAIが使いこなしてくれる(AIにUSBポートを持たせる機能という説明がなされています。USBポートを使って様々な道具と簡単に接続できる)。
これまで、生成AIは質問箱でしかなく、質問に答えてくれた作業をぜんぶ私自身がやる必要があり、状況をAIにイチイチ伝える必要がありました(これがなかなかストレスフル)。今は、claude君の①と②により、AIが「手」を手に入れ、私の指示をAIが自律的に進めてくれています。
具体的に言うと、Claude君と「何を作るか」の議論をして要件を定めたのち、「じゃあそれを作って」というと、私の開発環境で自ら判断しプログラムを書いて、書いたものをテストして修正して、ということを一気に進めてくれます。実装からエラー修正までを一気に勝手にやってくれる。
凸凹同士で最適なチームを形成してプロジェクトに臨む
ただ、claude君にも凸凹がありまして。彼はすごく優秀で先回りして手を動かせる部下のようなのだけど人の話をあまり聞かないで勝手に進める&すぐ疲れる、という特徴があります(かわいい)。なんか社会人1年目2年目にいそうな元気のいい若者、という感じです。
「確認してからコードを書いて」と伝えているのに気づいたらせっせとコードを書いてる。コードはこのフォルダに置くんだよ、と伝えているのに「あれ?どこだっけ?」と毎回わからなくなる。そして、一気に仕事をしすぎて、有料版でもトークンを消費しすぎて「しばらくお休みです」と割としょっちゅうなってしまう…。言葉遣いが即物的。たぶん君は仕事ができるイケイケな子だな。知っているぞ、そういう若者。
対してChatGPT君はもう少し共感的。必ず確認をしてくるし、絶対に否定から入らない。肯定的な議論にぴったり。ただし、(私の環境では)自分からは手を動かせない。絶対に否定をしない、ということと裏表ではあるのだけど、微妙に知っている素振りで話をしてくる(知ったかぶり傾向)。そのあたりは多少は割り引く必要あり。でも知的レベルは高い。ああ、こういう若い新入社員もいたなぁ。
この2名の特徴をうまいこと使い分けるとで、非常にスムーズに開発できるようになりました。
①大まかなアイディアを練り上げるときはChatGPT君に相談
絶対否定しない、大枠はきれいに整えてくれる。発想の拡散と収縮。アイディアの骨子を練るフェーズにはぴったり!
②具体的な実装・要件定義からはClaude君と協働
具体的な要件は手を動かすClaude君と練るのがよろし。そのときに「この要件を実装するにあたって確認する必要があることを教えて」と指示することが大事だと思います。ここを忘れると勝手に要件を作って手を動かし始めちゃう(新人とのコミュニケーションと一緒!)。分からないことはちゃんと聞くんだぞ。すり合わせてからGO!
③プログラミングの実装は基本お任せ
Claude君はもう、本当にすごいから。一気に書き上げてくれるし、その構造や仕組みで私が理解できないことは聞けば丁寧に説明してくれる。こちらの理解も進む。
④実装したプログラムのレビューはChatGPTに
セカンドオピニオンというやつです。できあがったプログラムをざっとGPT君に見せて客観的な視点で評価、追加修正すべきポイントを確認してもらう(この作業はGitHubというソフトウェアの開発プラットフォームを介して行います)
このチームにおいての私の役割は完全に司令塔です。やりたいことを決める。確認してほしいポイントを明確にしてもらい、そこを一つ一つ判断していく。判断さえくだせればあとは確実に形にしてくれる心強い仲間がいる。
ちなみに、私個人の秘書であればこの2名がいれば割と十分です。本当にスムーズに何でもできる。
ただ、今回のAI秘書は私自身だけではなく、チームとしての業務の効率化。このために私の有料アカウント、私のPCからだけではなく、皆がアクセスできるメッセージグループを通じてAIに指示や確認ができる状態を作ろうとしてます。
新しい開発チームでより自由にAI秘書を生み出す
ちなみに、今、作っているAI秘書gaku-coの大まかなフレームワークがこちら↓

この図も私の開発環境を参照してclaude君が描いてくれました
1か月前と基本の設計思想は変わっていません。
①自然言語で私とチームとやりとりできる
②さまざまなタスクを実行できる「ワークフロー」をモジュールで開発する
③会社内の情報を記録した記憶システムとつなぐ
ただ、その裏側で使う仕組みは大きく変わりました。
もともとはN8Nというプログラム言語を使わないでビジュアルでワークフローを構築できるツールを使って制作していました。プログラムが分からない自分にはこれが最適だと思っていたのですが…。AIに手を動かしてもらうようになると、このツールを介することで制約が大きくなりました。ツールのルールに縛られるので自由度が下がる。
今は、N8Nのようなツールを使わず、ゼロからclaude君が作ってくれたコードでgaku-coは動くようになっております。N8Nはプログラムがどう動くか勘所を学ぶためには大いに役立ちました。学習ツールとしては最適だったと思いますが、私の開発はより自由を求めて次のフェーズに移行しました。
同じく、チームメンバーとAIのやり取りは当初はLINEを想定していました。もともとLINEに最適化して仕組みをつくっていたのですが、LINEがどうにもAIとの接続の相性が悪い。もちろん、接続はできるのですが、シンプルなチャットボット以上の機能を連携させようとするといろいろと制約がでる&難しい。なので初期の開発はDiscordというコミュニケーションアプリを中心に開発していくことにしました。
DiscordはもともとAIボットとの親和性が高く、自由度がとても高いので開発スピードが一気にあがりました。ここは私たちがAIに合わせる(譲歩する)方が早いと判断しました。ちなみに、インターフェースはDiscordが完成したのちはLINEとも接続する仕組みを検討、ゆくゆくは音声でのコミュニケーションができるようにしていく予定です。
現在の開発段階は…Discord上でのコミュニケーションと記憶システムの構築と接続が完了しまして、様々な作業を進める「ワークフロー」のモジュール開発が始まっています。
いま、実装しようとしているワークフローは以下の4つです(下に行くほど要件定義があいまいで難易度が高い):
①社長(私)のスケジュール管理・調整(想定難易度:低)
②チーム全体のタスク管理および参照(想定難易度:中)
③月次の経費・請求処理の統合&会計分析(想定難易度:高)
④月次のスタッフのシフト案作成と稼働の集計(想定難易度:高)
デジタル世界の生態系は優しさが溢れている
2カ月ですっかり「開発者」みたいになっているワタクシですが、そうはいっても素人です。
それでもこうして前に進めているのは、生成AIの力はものすごく大きいのですが、それにも増して、助けられているのが国境を越えてデジタル空間に広がる「知恵をシェアする」文化です。これ、本当に本当にすごい。いいな、いいな、人間っていいな。
気付きとノウハウのシェアと循環と伝播がそこかしこで、網の目のように行われ続けている。非常に気前よく。困ったことをウェブ空間で探すと答えは誰かが教えてくれる「はい喜んで!」と。国境を越えて。その誰かの「知」そのものが「ここから先は有料です」ということがほぼなくて、アクセスしようとすれば誰でもアクセスできる。聞ける。使えるツールも溢れんばかりに存在する。
エンジニアの皆さんにとっては当たり前のことなのかもしれないけど初めて触れるワタクシにとっては目から鱗でした。世界が国境によって強固に分断されていく真っただ中の2025年。その裏側のデジタル空間では人間同士が気前よく「知」の共有を行い続けている。
リアルワールドとは全く異なる生態系がそこにありました。森、いやジャングルというか。あるいは菌が菌糸を広げる世界に近いかもしれない。
そのジャングルには知恵が豊富な仙人のようなハイプロエンジニアもいれば、私のような素人もいりるし、それこそGoogleやOpenAIのような巨大なIT企業もその生態系の中で重要なポジションをしめていて、ひしめき合っている。
人間の恣意・コントロールを超えた「自然な生態系」がそこに広がっているんだなぁ、と実感するのであります。生命体そのもの。ナウシカの世界みたい。超、面白い。
人間同士の知恵の交換のパワーに立ち戻る
また、私はそうしたインターネット上の空間とは別に、AIについて議論して情報交換をする仲間ができまして、その仲間たちと知識や知恵を交換したり、開発の進捗や興味あるテーマをポツポツと話すことで一気に理解が深まった気がしています(今回語っているやり方も多くはその仲間たちから教えてもらったり刺激を受けてやりはじめたこと)。
生成AIの進化でできることが広がりつつも、人のつながりからの気づきのインパクトはやっぱり圧倒的に大きいと思うのです。結局そこに戻ってくる感じがあるのです。
急速に変化・発展していく、優しさに溢れたデジタルな生態系にダイブしてみたい素人の皆さま、一緒に潜りませんか?ワタクシ、たかだか2カ月の取り組みですが、初心者が陥る落とし穴には一つ一つ落ちまくってきた自負があります。
そして、私の中にある「知」は喜んで放出したいと思っております。「おめーらバスケかぶれの常識はオレには通用しねえ。シロートだからよ」と豪語した桜木花道よろしく、シロート街道まっしぐらで行く所存ですし、シロートの皆さまと共に情報共有していければと思っとります。興味ある方、お声がけくださいませ。

用語解説つけてみました(Chat GPTがセレクトして、キャプションを書いてくれてます):
Claude(クラウド):
ChatGPTと同じ「生成AI」の一つで、文章作成やプログラミングも得意なAI。https://claude.ai/
Claudeデスクトップ:
Claudeが自分のパソコン内のファイルにアクセスし、作業を補助してくれる機能。
MCP(Model Context Protocol):
AIがいろんなツールやサービスとつながるための仕組み。道具箱の接続口のような役割。https://www.anthropic.com/news/model-context-protocol
トークン消費:
AIが文章を処理する際に使う通信量のようなもの。上限に達すると一時停止になる。
要件定義:
「何を作るか」「どう動くか」をあらかじめ具体的に決める工程。開発の設計図のようなもの。
GitHub(ギットハブ):
コードの保存や共有、レビューができる開発者向けのサイト。複数人の作業に便利。https://github.co.jp/
ワークフロー:
業務の流れを一連の手順として自動化する仕組み。AIがタスクを代行する際によく使う。
N8N(エヌエイトエヌ):
プログラミングせずに作業の自動化ができるツール。視覚的に操作できて初心者にやさしい。https://n8n.io/
Discord(ディスコード):
チャットや通話ができるアプリで、AIとのやりとりにも適した柔軟性の高いツール。https://discord.com/
インターフェース:
人とAIがやりとりするための接点。LINEやDiscordのような窓口のことを指す。
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