空から、砂糖が降ってきた。
先日の原っぱ大学フィールドでの話。すごく久しぶりに会った兄弟との話。
彼ら(特にお兄ちゃんの方)が僕と会いたがっていることは聞いていました。彼は小学3年生。たしか、1年生になりたてのころに原っぱ大学に来てくれました。思い切り走り回るタイプでもないし、積極的に大騒ぎするタイプでもない。どちらかという物静かに、自分のペースで遊ぶのが好きな感じ。
僕も小さいころ、割とそういうタイプだったので、気持ちはよくわかる。のんびり一人で遊ぶのも好きだけど、ゆっくりじっくり同じペースの仲間と遊びたい(のだと思う)。なんとなく、彼とはウマがあったし、気持ちもなんとなくよくわかったから、フィールドでもゆっくりじっくり、遊ぶことがこれまで多かった。
僕の週末の予定が他のイベントと重なることが増え、彼がフィールドにいるタイミングに僕がいられないことがしばらく続いていました。他のスタッフから「ガクチョーに会いたがっていたよー」なんて話を聞くたびに、気になりつつ、そして少しちくっと胸が痛みつつ、なかなかにスケジュールが合わずに月日が流れていました。
先日のこと、彼が参加するフィールドに僕もいることができました。
少し遅れて彼ら家族がやってきて…。なんとなく久しぶりだからこっちも少しだけ緊張、もしかして向こうも少し緊張していたのかもしれない。僕が大声であいさつると、彼は小声でちいさく「やぁ」。みたいな感じ。伏し目がちにすたすたと行ってしまう。話しかけてもなんとなくそっけない返事。
距離を無理やり詰めたくなるワタクシがいるが、ここは少しガマン(実際、『久しぶりじゃないかー』とぎゅっと抱きしめてみたけど、反応は淡泊なものでした)。
大人はどうにも子どもの明るく元気でシンプルな反応を楽しみにしちゃうけど…。
心の中の反応はそんな一直線じゃないんだよね。久しぶりに会えるかも、と思ってきて、実際に会った時のイメージと現実のギャップ。色々話そうと思ってても、話すことがでてこないもどかしさ。気恥ずかしさ。そういうのがごちゃごちゃーっとなっちゃってつかみきれなくて整理がつかない感じ。
そういう複雑さは大人も子どもも関係ない。そんなことを感じられるぐらい、ワタクシも年を重ねました。
しばらくはちょっと固い間がありながらも時間が流れていきます(それもまたよし)。
しばらくしたら、妹ちゃんのほうが、「アリに餌をあげるんだー」とアリを探し始めた。アリに砂糖をあげるんだと。あちこち探して、木片をひっくり返したらその下に大量のアリ。おそらく、彼らの巣の天井を私たちが剥がしてしまあのでしょう(すまん)。そのアリに砂糖をバサッとかける。
アリからすると、突然、空から大量の食料品がふってきた衝撃の事態。
餌をあげているつもりだけど・・・、そりゃむしろ迷惑じゃないかしら、と思いつつ、アリたちの反応をみんなで眺める。果たして、アリの群れの中の働き者たちは天から降ってきた砂糖を加えて移動をはじめる。アリ同士がぶつかったり、そもそも、もともと巣の蓋をしていた木片を持ち上げちゃったから、戻る場所がわからないはず(たぶん)。だから右往左往している。それでもちゃんと砂糖を持ち運ぶ。
小さな世界にぎゅーっと寄っていくと楽しい。そこには当然のごとく、小さな世界がある。
アリたちのそばにはシャクトリムシがいた。これも一緒に眺めていると面白い。
一番後ろの足4本ぐらいをまず固定する。ぎゅっと縮む。前足を遠くへ。前足を固定したらぎゅぎゅぎゅーっと後ろの足を寄せてくる。そのときに、小さな身体が伸び縮みにあわせてむぎゅぎゅっと膨らんで縮んでを繰り返す。
小さな小さな命。どんな仕組みで動いているのかわからんけど、自らの身体を制御して丁寧に動いてる。
すごいなー、とまたしばらく眺める。
ふっと脇を見ると、小さなどんぐりのかけらから、芽が伸びてる。
森の中の、半径30㎝の世界。いろんな命が交錯する世界。
ひとしきり、その小さな世界をみんなで眺めてあーだこーだ言っていた。彼の気を引こうとしていた自分もどこかに行って、ただ、小さな生き物たちの姿をワイワイ眺めていた。
いつの間にか、彼との間にあった固い何かは溶けてなくなっていました。
アリよ、ありがとう。
心に残る、いい時間だったな。余りに何気ない、特別なことは一切ない時間。観察記録をつけたわけじゃないし、彼らの記憶に残るかも分からない(たぶん、忘れてしまうでしょう)。それでいいんだよな、と思う。形に残らない流れてしまう時間の積み重ねこそが尊いんだよ。
「思い出」とか「学び」とか「記録」とか。私たちはすぐに「形」に残したくなるけど、そんなものは二の次でいいのだ(といいつつ、こうして文章(形)に残しているけどね)。

すでに登録済みの方は こちら